
合同会社を設立する手順の一つとして
定款を作成しなければなりません。
本日は、ご自身で合同会社の定款を作成する場合のポイントを解説致します。
定款の文書データを無料で配布しておりますのでご活用ください。

合同会社設立の流れ
- 定款作成
合同会社の原始定款を、社員となる者が作成します。
定款データをダウンロードしてください。
そのファイル内容を解説していきます。 - 出資の履行
出資金の振込
- 登記
法務局へ合同会社設立登記をします。
- 各種届出
税務署や役所等の各機関への届出をします。
定款作成
以下のボタンから、合同会社の定款の記載例のファイルがダウンロード可能です。
記載例は社員1人の最もシンプルなものとなります。
各会社の状況に合わせて条文の追加変更をしてご利用ください。
定款に記載する事項は3つに分類されます。
①絶対的記載事項:定款に必ず記載しなければならない事項で、記載しないとその定款は無効となる
②相対的記載事項:会社法の原則規定とは異なる効力を生じさせるためには、記載しなければならない事項
③任意的記載事項:定款に定めることは要求されておらず、任意に記載する事項
従って、絶対記載事項のみを記載しておけば、定款は有効に成立して設立登記が可能ですが、以下で紹介している10項目は一般的に記載されていることが多いです。
それ以外にも各社の事情に合わせて、項目を追加変更削除してみてください。
第1条(商号)
本条は絶対的記載事項です。
会社名の前後どちらかに「合同会社」と表記します。
商号に使用できる文字は以下の通りです。
①ローマ字(A~Zの大文字小文字)
②アラビア数字(0~9)
③次の符号:&(アンパサンド) ’(アポストロフィー) ,(コンマ)
‐(ハイフン) .(ピリオド) ・(中点)
上記③の6種の符号は、字句(日本文字を含む。)を区切る際の符号として使用する場合に限って用いることができ、商号の先頭又は末尾に用いることはできません。ただし、「.」(ピリオド)については、省略を表すものとして、商号の末尾に用いることもできます。
商号中に空白(スペース)を用いることはできません。ただし、①のローマ字の複数の単語の間を区切る場合には、これが許されています。
上記のルールに従えば登記は可能ですが、登記が可能であったとしても不正目的の商号の使用は禁止されます。会社法、不正競争防止法、民法等により損害賠償請求を受けたり、その商号の使用を停止させられることがあります。例えば、広く知れ渡っている有名な会社名と酷似させた商号により一般の人々が誤解を招くような商号は避けてください。
第2条(目的)
1 ○○の製造及び販売
2 ××の輸入及び販売
3 前各号に附帯関連する一切の事業
本条は絶対的記載事項です。
金融機関から融資を受ける際に事業計画書を提出しますが、その事業について定款に記載されていることを要するため、具体的に目的として挙げる必要があります。また、あまり目的の項目が多すぎると融資担当者からすると、当該会社の強みがなんなのかが薄れてしまい印象が良くなくなることもあるそうです。多くとも10項目以内が目安となります。
第3条(本店所在地)
本条は絶対的記載事項です。
最小行政区画までの記載(以下の例1)にしていれば、同一市町村内での移転であれば定款を変更する必要がなく所在場所の変更登記のみを行えばよいです。従って、こちらがお勧めです。
もちろん最小行政区画以降の住所をそのまま記載(以下の例2)することも可能ですが、その場合、同じ市町村内で本店を移転させた場合も社員全員の同意にて定款変更を行い、所在場所の変更登記を行います。
例1 本店の住所が「宮城県仙台市〇〇区〇〇一丁目1番1号」の会社
定款に記載する本店所在地「宮城県仙台市」
登記簿に記載する本店所在場所「宮城県仙台市〇〇区〇〇一丁目1番1号」
この会社の本店を「宮城県仙台市△△区△△一丁目1番1号」に移転する場合、定款は変更する必要がなく、法務局にて本店所在場所の変更登記のみを行えばよいです。
例2 同じく、本店の住所が「宮城県仙台市〇〇区〇〇一丁目1番1号」の会社
定款に記載する本店所在地「宮城県仙台市〇〇区〇〇一丁目1番1号」
登記簿に記載する本店所在場所「宮城県仙台市〇〇区〇〇一丁目1番1号」
この会社の本店を「宮城県仙台市△△区△△一丁目1番1号」に移転する場合、社員全員の同意にて定款を変更し、法務局にて本店所在場所の変更登記を行います。
第4条(公告方法)
本条は任意的記載事項です。
官報に掲載する方法、日刊新聞紙に掲載する方法、電子公告による方法の中から選ぶこととなります。
株式会社では事業年度ごとに決算公告をしなければなりませんが、合同会社の場合はそのような義務はなく、公告をする機会は少なく、合同会社の多くが官報に掲載する方法を登記しています。
なお、日刊新聞紙に掲載する方法の場合は、発行地を特定することが望ましいです。
第4条 当会社の公告方法は、宮城県において発行する○○新聞に掲載する方法とする。
第5条(社員の責任)
本条は絶対的記載事項です。
合同会社の社員は全員が有限責任社員となります。
ここで、合同会社における「社員」とは、世間一般で言う従業員のことではありません。
出資者であり、原則として業務を執行する人のことを言います。
つまり、「社員」=「出資者」であり「経営者」ということです。
<会社法第580条2項>
有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
つまり、合同会社では、株式会社の株主と同様に、社員が会社債権者に対して直接の責任を負うことはないことになります。
なお、合名会社と合資会社は無限責任社員がいなければなりません。無限責任社員は当該持分会社の財産をもって債務を完済することが出来ない場合や、当該持分会社の財産に対する強制執行が功を奏しなかった場合は、会社債権者に対して連帯して直接の責任を負います。(同580条1項)
第6条(社員の氏名及び住所並びに出資の目的及びその価額)
ただし、社員の出資の目的は、金銭とする。
宮城県仙台市○○区○○町○丁目○番○号
社員 ○○○○(金○○万円)
本条は絶対的記載事項です。
社員全員に関して記載してください。
第7条(事業年度)
本条は任意的記載事項です。
事業年度は1年を超えることはできませんが、1年を2事業年度以上にわけることができますので、ご自由に定めてください。
1月1日から同年12月31日までとする場合は次のようになります。
第7条 当会社の事業年度は、毎年1月1日から同年12月末日までの年1期とする。
第8条(設立時の資本金の額)
本条は任意的記載事項です。
資本金の額は、株式会社のように設立に際して出資される財産の価額の2分の1以上を資本金とすべき制約はなく、出資した全額から0円までの範囲で自由に決められます。資本金に計上しなかった残額は全て資本剰余金となります。ただし、設立時は出資された全額を資本金の額とするのが一般的です。
記載例のほか、具体的な金額を記載しても良いです。
第8条 当会社の設立時の資本金の額は、金100万円とする。
資本金はいくらにすべきか?
資本金の額は登記事項であるため、登記事項証明書に記載されます。登記事項証明書は誰でも取得できるものですから、取引をしようとする相手方が目にした際に躊躇するような額にはしないほうがよいでしょう。
一般的な資本金の額の目安は6か月分の運転資金と言われております。
以下にe-Stat(政府統計の総合窓口)による設立時の資本金の額のデータを示します。

こちらは2023年度の1年間で設立された株式会社及び合同会社の資本金の額毎の設立件数を示したものです。
合同会社の設立時の資本金の額の最頻値は100万円未満で 19,673件です。
1年間に設立された合同会社の件数が40,751件ですので、約半数が資本金の額を100万円未満として設立しております。このあたりのデータも参考にされてみるのも良いでしょう。
第9条(最初の事業年度)
本条は任意的記載事項です。
会社成立の日から第7条で定めた事業年度の末日までを最初の事業年度とします。最初の事業年度も1年を超えることはできませんので、会社が成立してすぐに決算をすることになると大変ですので、会社成立日(設立登記の申請日)を検討するとよいでしょう。
第10条(定款に定めのない事項)
本条は任意的記載事項です。
記載例のとおりで大丈夫です。
その他の記載検討例
第〇章 社員の加入及び退社
(相続の場合の特則)
第〇条 当会社の社員が死亡した場合には、当該社員の相続人は当該社員の持分を承継する。
本条は相対的記載事項です。
社員が死亡した場合は法定退社事由(会社法第607条)ですが、相続人に持分を承継させ当該会社の社員としたい場合に定款に記載しておきます。
社員が欠けた合同会社は解散します(会社法第641条)。創業者一代限りで解散をすることを希望する場合には必要のない規定となりますが、事業を継続する場合には規定しておきましょう。不動産賃貸により収益を得る事業など、事業を継続することが多い業種の場合は必要な可能性が高いでしょう。
記載例以外にも、相続人の遺産分割協議により定められた一人が承継する旨や、死亡した社員以外の社員の同意により相続人が承継する旨など様々な規定が考えられます。
第〇章 業務執行権及び代表権
(業務執行社員)
第〇条 当会社の業務執行社員は、社員○○○○とする。
本条は相対的記載事項です。
原則、合同会社の社員は全員に業務執行権があります。
社員が複数名で業務を執行しない社員を置きたい場合は、本条文を規定します。
第〇章 業務執行権及び代表権
(代表社員)
第〇条 当会社の代表社員は、○○○○とする。
2 代表社員は社長とし、当会社を代表する。
本条は相対的記載事項です。
原則、合同会社の業務執行社員は全員が代表社員となります。
業務執行社員が複数名いて、代表社員を特定の者にしたい場合は、本条文を規定します。
記載例のほか、業務執行社員の互選により代表社員を定める旨を規定することもできます。
第〇章 定款の変更
(定款の変更)
第〇条 当会社の定款の変更は、社員の過半数の一致をもって行う。
本条は相対的記載事項です。
原則、合同会社の定款の変更は総社員の同意が必要です。
社員の過半数や、〇分の〇以上の一致にもって行いたい旨を規定できます。
また、社員ではなく業務執行社員の一致による旨なども規定できます。
章立ての配列は特に決まっておりませんが、
「総則」、「社員及び出資」、「業務執行権及び代表権」、
「社員の加入及び退社」、「計算」、「定款の変更」、「附則」
の順で記載するとよいです。
定款を書面で作成する
作成した文書データをA4サイズの用紙に片面印刷。
作成通数は2通(会社保存用、登記所提出用)。
定款の記名押印欄に社員全員が記名押印注。
製本テープを使用する場合は、製本テープと紙面にまたがり社員全員の契印。
ステープラーのみの場合は、各ページの継ぎ目に社員全員の契印。
いづれも上記の「2」で使用した印鑑と同じ印鑑を使用のこと。
会社保存用の定款の表紙の裏面に4万円の収入印紙を貼付し代表社員が消印。
上記の「2」で使用した印鑑と同じ印鑑を使用のこと。
※注 合同会社の定款の押印は、認印でも構わないです。
しかし、複数の社員がいる場合は社員全員が納得して作成したことを明らかにするために
社員全員が自ら実印を押印したほうが良いと思います。
後日、社員間で定款の内容や真実性に争いが起こることを予防するためです。