会社を設立しようと考える際、
株式会社にしようか?合同会社にしようか?
と悩む方が多いようです。
両社の違いを登記の視点でご紹介させて頂きます。

株式会社と合同会社の違い

違いを一言でいうと、所有と経営が一致しているかどうかです。
株式会社とは、資金集めのために多くの出資者(株主)を募り、出資者とは別の人たち(取締役)が経営を行うことが出来る会社のことです。
一方、合同会社とは、所有と経営が一致している会社のことです。原則として1、出資者がお金を出すだけでなく業務も行うということです。なお、所有と経営を行う者を会社法上、「社員2」といいます。世間一般でいう所の従業員という意味ではありません。

  1. 定款に定めることにより業務を行わないでお金を出すだけの者も定められます。 ↩︎
  2. 登記事項証明書には業務執行社員の氏名が登記されます。
    定款で業務を執行しない社員が定められている場合は、その者の氏名は登記されません。
    そして、代表社員は氏名と住所が登記されます。 ↩︎

費用面の違い

設立時にかかる費用株式会社合同会社
定款認証費1.5万~5万円定款認証不要
定款謄本等約2,000円不要
定款収入印紙代0円 or 4万円0円 or 4万円
設立登記登録免許税15万円~6万円~
合計16.7万円~6万円~

※1 資本金の額等により異なる。
※2 電子定款の場合は収入印紙不要。書面定款の場合は4万円の収入印紙貼付。
※3 資本金の額の0.7%が登録免許税額となる。その額が15万円未満の場合は登録免許税額は15万円となる。
※4 資本金の額の0.7%が登録免許税額となる。その額が6万円未満の場合は登録免許税額は6万円となる。

設立後に定期的に
起きる事項
費用株式会社合同会社
役員の重任登記1万 or 3万円原則約2年毎不要
決算公告約6万円事業年度毎不要

※5 役員が任期満了したが、その者が再び役員に就任する登記のこと。
※6 資本金の額が1億円以下の場合の登録免許税額は1万円。超える場合は3万円。
※7 原則は約2年毎。定款の定めにより最長で約10年毎となる。
※8 官報公告の場合。

その他、以下の登記事項に変更があった場合には登記が必要で、登録免許税額がかかります。
登録免許税の欄にあるかっこ書きのカタカナが同一のものは、一件にまとめて申請すれば一つ分の額のみでよくなります。
例1 目的(ツ)と商号(ツ)の変更をまとめて一件で申請すると、登録免許税は3万円。
例2 目的(ツ)と商号(ツ)の変更を別々に申請すると、
   登録免許税はそれぞれの申請で3万円で、計6万円。
例3 目的(ツ)と支店の所在地(ヲ)の変更をまとめて一件で申請すると、登録免許税は6万円。
同じ区分の変更事項が複数ある場合は、例1のようにまとめて申請することで節約できます。

登記事項変更する
場合の
登録免許税
株式会社合同会社
目的3万円(ツ)
商号3万円(ツ)
本店及び支店の所在地3万円(ヲ)
新たに支店を設置6万円(ル)
会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め3万円(ツ)
資本金の額3万円~(ニ)
取締役の氏名1万 or 3万円(カ)
代表取締役の氏名及び住所1万 or 3万円(カ)
取締役会設置会社であるときは、その旨3万円(ワ)
第四百四十条第三項の規定による措置をとることとするときは、同条第一項に規定する貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの3万円(ツ)
公告方法3万円(ツ)
業務を執行する社員の氏名又は名称1万 or 3万円(カ)
代表する社員の氏名又は名称及び住所1万 or 3万円(カ)
代表する社員が法人であるときは、当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所1万 or 3万円(カ)
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運営面の違い

項目株式会社合同会社
出資者の呼称株主社員
経営者の呼称取締役社員
会社代表者の呼称代表取締役代表社員
会社代表者の住所非表示措置可能不可
必置機関株主総会、取締役社員
経営者の任期あるない
出資者の議決権等出資額(持株数)による出資額によらない

会社代表者の呼称

会社を代表する者は登記事項証明書には、
株式会社の場合「代表取締役」と記載され、
合同会社の場合「代表社員」と記載されます。
代表取締役社長という呼称がしっくりくるというのが理由の一つとして株式会社を選択する社長もいらっしゃいます。
ただ、合同会社の場合も、名刺上の肩書を「代表社員」ではなく
単に「社長」とすることはなんの問題もありません。

会社代表者の住所非表示措置

会社を代表する者は登記事項証明書には、
氏名と住所が記載されます。
株式会社を設立する場合は、住所の一部までしか表示しない措置が可能です。
合同会社の場合は、それができません
著名人はもちろんですが、そうでなくてもプライバシーの保護を重要視したい場合には判断材料の一つになるでしょう。

必置機関

合同会社は株式会社と比べてすばやい決断が可能で運営のコストが低く抑えられます。

 株式会社は原則として所有と経営が分離しているため、所有者=株主のための株主総会が必置機関となっております。そのほか、取締役会を設置する場合は取締役が3人以上必要で、かつ監査役も設置しなければならない等の様々なルールがあります。
 一方、合同会社は社員総会の設置義務はありませんし、取締役会や監査役のような監視機関の設置義務が発生することもありません。また、社員が2人以上いる場合は、合同会社の業務は社員の過半数をもって決定することになっていますが、定款で別段の定めをすることが可能だったりします。

経営者の任期

株式会社では定期的に役員の登記が必要であり、合同会社ではこのコストと手間が省けることになります。
反面、株式会社では定期的に経営陣の見直しができるという点がメリットにもなり得ます。

 株式会社は原則として取締役や監査役など役員の任期が会社法により規定されています。取締役の任期は原則として約2年であり、同じ者が再任する場合でも重任(任期満了による退任と就任の登記を合わせたもののこと)の登記が必要です。公開会社でない株式会社の場合は、定款の規定により最長で約10年まで伸長できます。
 一方、合同会社の場合は業務執行社員の任期はありません。また、仮に定款に業務執行社員の任期を定めて、その者が任期満了後に再度業務執行社員となったとしても重任の登記は必要ありません。

※9 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。

出資者の議決権等

合同会社では、社員の同意等の権利は、原則として出資額によらずに1社員につき1個となっています。

 株式会社は原則として、株主総会に於ける議決権が持株数に比例します。
 一方、合同会社の場合は1社員につき1個となっております。
例えば会社法上、
「社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。(590条2項)」、
「持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができる。(637条)」
等と記載があり、出資額によりません。

まとめ

合同会社は設立時、運営時共にコスト面で株式会社よりもだいぶ安くすみます。
運営面で申しますと、出資者がごく少数であれば機動性に長けている合同会社が良いですし、
出資者が多数になれば株式会社のほうが運営しやすいでしょう。
最初の起業時は合同会社として、会社の成長とともに運営がしづらくなってきたならば、
株式会社へ変更することもできます。
もちろん、その逆に、株式会社から合同会社へ変更することも可能です。